急性心不全治療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Treatment of Acute Heart Failure( JCS 2011)
 
 ノルアドレナリン,ドパミン,ドブタミンの薬理作用については,前項Ⅲ.4.4.強心薬を参照されたい.

(1) 肺うっ血は強いが血圧が低下していない急性心不全では,利尿薬や血管拡張薬で治療する.一部利尿薬を増やしても利尿が十分に生じない場合がある.腎障害や心係数が低い可能性もあり,この時はドパミンを用いた上で利尿薬を用いると利尿が得られることがある.

(2) 肺うっ血はあるが収縮期血圧が90mmHg以上の患者では,前述したPDE阻害薬やアデニル酸シクラーゼ賦活薬といった血管拡張性強心薬の使用を考える.血圧低下が生じたり,危惧される場合にはドブタミンに切り替えたり,あるいは併用したりする.ドブタミンを2~5μg/kg/分で点滴を開始し,必要に応じて10μg/kg/分まで増量する.これでも血圧の上昇が不十分であるならばドパミンに切り替えるか,あるいは両者を併用する.血圧が安定した段階で,肺うっ血が強ければニトログリセリンなどの静脈拡張薬を併用する.また時間尿が1mL/kg/時以下ならば利尿薬を追加する.

(3) 肺うっ血と同時に収縮期血圧が90mmHg未満の患者では,ドパミンを2~5μg/kg/分から開始する.大半の患者ではドパミンを10μg/kg/分まで増量すると血圧が上昇してくるが,15μg/kg/分まで増量しても血圧が上がらない時はノルアドレナリン0.03~0.3μg/kg/分の持続点滴静注を開始する.強力な末梢血管収縮作用がある.心原性ショックでは収縮力が低下した心臓に対して後負荷を増大させるためできるけ少量を短期間用いることを心掛けなくてはならない.大量に用いなくてはならない患者では,早急にIABPやPCPSなどによる機械的な補助循環に切り替え,ノルアドレナリンの使用量を減らす. 

(4) 肺うっ血と同時に収縮期血圧が70mmHg未満の患者では,ドパミンとノルアドレナリンを併用するが,最近ではドブタミンとノルアドレナリンの併用で多臓器不全を克服するという報告がある.さらに必要に応じてIABPやPCPSなどによる機械的な補助循環を行う.
5 昇圧薬
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