急性心不全治療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Treatment of Acute Heart Failure( JCS 2011)
 
 MRは疾患の進行度により,急性と慢性に分類される.急性MRは腱索断裂や感染性心内膜炎,それに急性心筋梗塞に伴う乳頭筋断裂などが原
因で生じる.この治療の詳細はⅢ.5.6.を参照されたい.

 慢性MRの急性増悪時にも同様に,血管拡張薬を中心に,利尿薬,PDEⅢ阻害薬,カテコラミン,IABPを用いて急性期治療を行い,血行動態が安
定した患者,あるいは逆に血行動態の改善が認められない患者にはMRに対する外科的治療を考慮する.基本的には左室機能の程度にかかわら
ず,MRによる急性心不全を発症した患者では手術対象であるが,手術後に逆流がなくなるため左室後負荷が増加し,左室駆出率が術前に比べ低
下する可能性が高い.一般的に有症状で左室駆出率30%以上,左室収縮末期径55mm以下の患者が手術適応と判断される.手術は可能であれ
ば僧帽弁置換術より僧帽弁形成術が推奨される.僧帽弁置換術の場合も弁下組織温存術式が望まれる.
2 僧帽弁逆流症(MR)
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