急性心不全治療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Treatment of Acute Heart Failure( JCS 2011)
 
 低ナトリウム血症患者では水分摂取を1 日1.5~ 2Lに制限する.しかし,画一的な水分摂取制限に臨床的な利点はない38)

 減塩は必須事項である.1gのNaCl摂取は200~300mLの体液量を増加させる.これによって心臓への負荷を増大させる.1日3gの減塩は心血管事
故発症を10~ 15%減少させる39)

 血行動態と利尿が安定しない限り,栄養摂取を目的とした経口摂取は控える.しかし,積極的な循環管理を長期に強いられる患者ではストレスを考
慮して,日常のリズムと精神の安定を目的として少量の経口摂取は早期から開始する.経口摂取を開始する目安は,酸素投与量が減量でき,酸素飽
和度を維持できるようになれば可能である.心不全では腸管浮腫により食欲が低下する.経口摂取が困難なら中心静脈栄養を行う.長期挿管患者で
誤嚥の多い患者では経鼻経管栄養を考慮する.

 1 日の摂取カロリーは体重あたり20~ 25kcalを目標にする.中心静脈栄養の患者では急激なカロリー増加は肝機能障害を惹起する.1 日500kcal
程度の摂取から始め,1~ 2日ごとに200~ 300kcalずつ摂取量を増やす.制酸薬,インスリンなどの投与も検討し,長期に及ぶ場合は脂肪酸,ビタミ
ン,微量元素などの投与にも留意する.

 内臓脂肪の過剰蓄積は心機能を低下させる40).BMI (体格指数)が30kg/m2以上の患者では減量を要する.一方,減量を意図していないにもかか
わらず,6 か月間で6%以上体重が減少する患者では心臓悪液質(cardiaccachexia)を疑い,積極的な栄養補給を行う41)
3 水分摂取・食事
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