急性心不全入院時に著明な体液貯留や体重増加を認める症例では,高度の体重増加に耐えられる心機能の予備力があり,血圧も比較的保たれ
ている.基本的には利尿薬を中心とした治療となるが,心機能の低下度や治療の反応性によっては強心薬も必要である(表42).利尿薬の単回静脈
内投与を反復してもよいが,単回静脈内投与に抵抗性の場合は利尿薬の静脈内持続投与が有効な場合がある(クラスⅡ a,レベルB)(表23).ま
た,過剰な体液貯留には心腎連関の関与が指摘されており,臓器保護薬としてのカルペリチドも考慮されてよい.さらに血栓形成予防のためヘパリ
ンを持続投与する.一方,利尿による低ナトリウム血症,低カリウム血症,低マグネシウム血症に注意する.低ナトリウム患者にはバゾプレシン阻害
薬(トルバプタン)による水利尿が有用である場合がある275),276).また,患者によっては腎血流を増加させる必要があり,強心薬をも必要とする.利
尿薬抵抗性ないし高度な腎機能障害を有する例では限外濾過や血液濾過による循環血液量のコントロールが有効である277),278).近年,限外濾過
による治療群は利尿薬持続投与群と比し,再入院率が有意に低いことが報告された278).