急性心不全治療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Treatment of Acute Heart Failure( JCS 2011)
 
両心不全の治療:循環血液量の増加が主体の場合
 クラスⅠ
  ・ループ利尿薬:レベルC
 クラスⅡa
  ・カルペリチド:レベルB
  ・限外濾過法:レベルB
  ・強心薬(ドブタミン,PDE阻害薬):レベルC
 クラスⅡb
  ・サイアザイド利尿薬:レベルC
  ・トルバプタン:レベルB
両心不全の治療:心拍出量の高度な低下が主体の場合
 クラスⅡb
  ・強心薬(ドブタミンとPDE阻害薬の併用):レベルC
薬剤用法・用量
モルヒネ5~10mg/Aを希釈して2~5mgを3分かけて静注
フロセミド一回静注投与量は20~120mg,持続静注は2~5mg/時程度
ジゴキシン0.125~0.25mgを緩徐に静注.有効血中濃度は0.5~1.0ng/mL.中毒に注意
ドパミン0.5~20μg/kg/分:5μg/kg/分以下で腎血流増加,2~5μg/kg/分で陽性変力作用,5μg/kg/分以上で血管収縮・
昇圧作用
ドブタミン0.5~20μg/kg/分:5μg/kg/分以下で末梢血管拡張作用,肺毛細管圧低下作用
ノルアドレナリン0.03~0.3μg/kg/分
ミルリノン50μg/kgをボーラス投与後0.1~0.75μg/kg/分持続静注.最初から持続静注が多い
オルプリノン10μg/kgをボーラス投与後0.1~0.3μg/kg/分持続静注.最初から持続静注が多い
コルホルシンダロパート0.1~0.25μg/kg/分を初期投与量として,血行動態と心拍数により用量調節.心拍数増加に注意
ニトログリセリン0.5~10μg/kg/分で持続静注.耐性に注意
硝酸イソソルビド1~8mg/時,0.5~3.3μg/kg/分.耐性に注意
ニコランジル0.05~0.2mg/kg/時で持続静注
ニトロプルシド0.5μg/kg/分から持続静注を開始し,血行動態により用量調節(0.5~3μg/kg/分)
カルペリチド0.025μg/kg/分(時に0.0125μg/kg/分)から持続静注開始し,血行動態により用量調節(0.2μg/kg/分まで).
0.05~0.1μg/kg/分の用量が汎用されている
 急性心不全入院時に著明な体液貯留や体重増加を認める症例では,高度の体重増加に耐えられる心機能の予備力があり,血圧も比較的保たれ
ている.基本的には利尿薬を中心とした治療となるが,心機能の低下度や治療の反応性によっては強心薬も必要である(表42).利尿薬の単回静脈
内投与を反復してもよいが,単回静脈内投与に抵抗性の場合は利尿薬の静脈内持続投与が有効な場合がある(クラスⅡ a,レベルB)(表23).ま
た,過剰な体液貯留には心腎連関の関与が指摘されており,臓器保護薬としてのカルペリチドも考慮されてよい.さらに血栓形成予防のためヘパリ
ンを持続投与する.一方,利尿による低ナトリウム血症,低カリウム血症,低マグネシウム血症に注意する.低ナトリウム患者にはバゾプレシン阻害
薬(トルバプタン)による水利尿が有用である場合がある275),276).また,患者によっては腎血流を増加させる必要があり,強心薬をも必要とする.利
尿薬抵抗性ないし高度な腎機能障害を有する例では限外濾過や血液濾過による循環血液量のコントロールが有効である277),278).近年,限外濾過
による治療群は利尿薬持続投与群と比し,再入院率が有意に低いことが報告された278)
1 循環血液量の増加が主体の場合
表42 両心不全の治療
表23 我が国で使用されている急性心不全治療静注薬
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