急性心不全治療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Treatment of Acute Heart Failure( JCS 2011)
 
 急性心不全に関する疫学調査は日本では本格的に行われておらず,未だに明確な実態や動向は明らかにされていない.厚生労働省報告には急性心不全という疾患分類さえない.心不全として包括統計されているが,調査日の心不全推定患者数は平成20年で47,500人であり,推定入院患者数は27,900人である7).年度別推移をみると平成8年が18,700人,その後次第に増加している.しかし,これも年間の急性心不全入院患者の推移を示すものではない.一方,東京都CCUネットワークの2008年版データベースによれば,急性心筋梗塞は4,647人であり,急性冠症候群を含まない急性心不全患者4,797人が緊急搬送されている.これは急性心筋梗塞数よりも多く,過去数年間増加傾向にある8).急性心不全を発症する危険因子である高血圧や糖尿病は,平成18年国民健康栄養調査によれば高血圧患者数が3,970万人,糖尿病患者数が予備群を含めて1,870万人と推定されている7).このようなデータから急性心不全患者は原因疾患の動向を反映して必ずや増加すると推測される.医療負担の観点からも早急な疫学調査とそれに見合った現実的対応が必要である.
2 疫学
1 急性心不全の患者背景 2 欧米の疫学調査との比較
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