急性心不全治療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Treatment of Acute Heart Failure( JCS 2011)
 
クラスⅠ
 ・ 12誘導心電図,血液ガス分析,血算生化学検査,血漿
BNP(NT-Pro BNP):レベルC
 ・ 胸部X線,心エコー図,ドプラ心エコー図:レベルC
 動脈血液ガス分析は呼吸不全やアシドーシスを診断する.可能であれば酸素投与前に施行する.動脈血液ガス採血を行った後に速やかに酸素を投与
する(表13).急性心不全の患者では頻呼吸のために動脈血酸素分圧(PaO2)は低下し,同時に動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)は低下していることが
多い.しかし,高度の肺うっ血ではPaCO2が上昇する.これらの血液ガス分析結果は呼吸数と一緒に記載しておく.CO2蓄積の傾向がある患者に高濃度
の酸素吸入を行うと,PaCO2 が増加し,CO2ナルコーシスに陥ることがある.Ⅱ型の呼吸不全では酸素吸入だけでは呼吸不全は改善しない.CPAPや
BilevelPAPなどのNPPVを開始する.やむを得ないと判断されれば気管内挿管を行う.高度の心機能低下による組織低灌流のため代謝性アシドーシス
になっている患者は内科的治療に抵抗する.

 CK特にCK-MBやトロポニンTの上昇は急性心筋梗塞の存在を強く示唆する.心臓マッサージや電気的除細動を行った後は数値の解釈に配慮を要す
る.また,トロポニンTやI は急性心不全単独でも30~ 50%の患者で上昇している.電解質異常や腎機能,血液検査(貧血の有無),肝機能検査,感染
や炎症の有無,なども心不全の原因疾患を診断する上で重要である.肺うっ血が明らかな急性心不全ではほとんどの患者で血漿BNP値が数100pg/mL
以上に上昇し, 診断に利用できる. また,BNP(NT-Pro BNP)値は経過観察にも役に立つ.収縮力が低下していない患者で急性心不全が疑われる例
ではBNP(NT-Pro BNP)値が拡張性心不全の診断の糸口になる24).AST(GOT),ALT(GPT),総ビリルビン値は右心不全で上昇する.治療により右
心不全が改善しない場合を難治性心不全と判断する.
5 動脈血液ガス分析および血算生化学検査
表13 急性心不全入院時検査
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