心不全の増悪予防は,予後やQOLの改善,それに医療コストの軽減の観点から極めて重要である166).心不全の増悪因子は塩分・水分制限の不徹
底,薬物治療に対するアドヒアランスの低下,活動制限の不徹底が多くを占め,これらは予防可能な要因である167).再入院予防には包括的な患者教
育が極めて重要である.退院前の看師による十分な患者教育は心不全患者の予後を改善する168).入院早期から退院前まで早期退院と再発予防を
目指して患者教育を継続的に行う169),170) (表31).急性期治療において症状発現から治療開始までの時間を短縮すると,入院期間が短縮され,死
亡率の低下,QOLの向上,医療コストの低減に繋がる158),171).したがって,患者および家族に対し心不全症状,対処法,緊急時対応を説明し,発症
した場合に速やかに対処できるように教育する.また,退院後の自己管理能力を維持,向上させるための教育を行う.患者支援には,医師,看護師,
薬剤師,理学療法士,栄養士,臨床心理士などで構成される多職種チームによる疾病管理プログラムが有効である47).特に,高齢心不全患者に対し
ては,セルフケア行動を評価した上で172),個人の生活環境に適した自己管理方法を入院早期から立案し,退院までに継続的に患者・家族へ教育す
る.