急性心不全治療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Treatment of Acute Heart Failure( JCS 2011)
 
 アデノシンA1 受容体拮抗薬 ロロフィリンは腎血流量を増加させ,ナトリウム再吸収を抑制する.急性心不全患者を対象としたプラセボとの比較試
験ではロロフィリン投与群において自覚症状の改善が見られたが,全体的な有効性に差はなかった.ロロフィリン投与群では痙攣発作が多くみられた
103)

 リラキシンは妊娠関連ホルモンで全身および腎血管拡張作用を有する.急性心不全患者を対象とする用量反応試験で30mg/kg/日投与によって自
覚症状の改善が見られた.投与後60日における心臓死あるいは心不全増悪による入院はリラキシン投与群で低下傾向にあった104)

 イストラキシムは細胞膜Na-K-ATPase刺激と筋小胞体タイプ2aカルシウムATPase活性を増加させる.心不全患者において拡張機能改善と心拍数
低下をもたらす105)

 ウロコルチンはコルチコトロピン放出因子ファミリーに属し,心臓や血管内皮に多く発現する.健常成人や心不全患者に静注することによって用量依
存的に心拍数,心拍出量を増加させ,末梢血管抵抗を低下させる106)

 心筋特異的ミオシンATPase賦活薬CK-1827452 は陽性変力作用を有するが,心筋酸素消費量を増加させない.

 シナシグアート(BAY 58-2667)は可溶性グアニレート・シクラーゼ刺激薬である.急性心不全の場合のように酸化ストレスが亢進している場合にも
血管拡張作用による循環動態改善をもたらす107)

 C型ナトリウム利尿ペプチドは,静脈系を拡張するが利尿作用はない.D型ナトリウム利尿ペプチドは利尿作用を有する.いずれも急性心不全患者に
おいて治験中である.
8 治験中の急性心不全治療薬
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