急性心不全治療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Treatment of Acute Heart Failure( JCS 2011)
 
1 序文
 起座呼吸やうっ血を主徴とする急性心不全患者は増加の一途にある.これは長寿社会における人口高齢化比率の上昇と心筋梗塞など原因疾患への優れた急性期対応を反映している.少なくとも今後30年間にわたって心不全患者が毎年0.6%ずつ増えていくと推定される1).心不全は広範な医療負担を強いる代表的な多疾患有病者であり,この増加分が次世代あるいは次々世代の負担強化とならないような医療のあり方が求められる.心不全を重症化させない,心不全を再発させないとの心不全予防の観点が強調される所以である.

 このような背景を受けて,日本循環器学会は2000年に「急性重症心不全治療ガイドライン」を発表し,2006年には「急性心不全治療ガイドライン(2006年改訂版)
/Guidelines for Treatment of Acute Heart Failure(JCS2006)」を加えた.心不全医療の水準化を少しでも押し進めようとの意図の表れである.この度,5年間の検証
を経て,2010年度の日本循環器学会学術委員会(委員長 堀 正二)より「急性心不全治療ガイドライン2011作成班(班長 和泉 徹)」を結成し,部分改訂を加えるようにとの指示があった.
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