急性心不全治療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Treatment of Acute Heart Failure( JCS 2011)
 
低灌流所見の有無
なしなしありありうっ血所見 起座呼吸
 頸静脈圧の上昇
 浮腫 腹水 肝頸静脈逆流低灌流所見
 小さい脈圧 四肢冷感 傾眠傾向
 低Na血症
うっ血の所見の有無  腎機能悪化
dry-warmAwet-warmBdry-cold
L
wet-cold
C
 急性心不全は,たとえ血圧が保たれていても急速に心原性ショックや心肺停止に移行したり,既に心肺停止や心原性ショックで搬送されてくること
がある.したがって,初期治療の目的は,(1)救命,生命徴候の安定,(2)呼吸困難などの自覚症状改善,そして(3)臓器うっ血の軽快を図る,ことに
ある.可能な限り早期に介入を開始し,医療負担やリスク負担が少ない介入法で病状の安定と維持に努める.

 そのためには,患者の呼吸困難や苦痛に対応した後に,病態や発症機転,血行動態,重症度を的確に診断し,心不全の原因疾患,誘因や増悪因
子,合併症を適切に診断し,速やかに介入して臓器障害を最小限に留めることが基本である.また,急性冠症候群をはじめとして,疾患特異的な根治
療法を迅速に求められる患者も多い.適宣,より高次施設への紹介や転院を円滑に行うことも重要である.病院到着時に心肺停止状態であれば,
ACLSに準じた救命処置を行う.多くの患者は,血圧は保たれているが肺うっ血症状を訴えている急性心不全状態にあり,硝酸薬スプレーや硝酸薬舌
下錠の使用あるいは静注で,症状は急速に軽減する.適切な薬物治療でも血行動態が安定しない場合には大動脈内バルーンパンピング(intraaortic
balloon pumping:IABP)や経皮的心肺補助(percutaneous cardiopulmonary support:PCPS) の適応となる.

 初期治療では自覚症状の軽減と生命徴候の安定を図り,動脈血酸素飽和度,肝腎機能,体重,血漿BNP(NT-Pro BNP)値の改善を目指
す.Nohria-Stevenson分類でいえば何としても迅速にProfile A,dry and warmに導くことである(図1b6).その上で,患者の背景に応じて医療負担
が少なく,長期予後が期待される適切な介入法を処方する.
1 治療法の基本
図1b Nohria-Stevensonの分類
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