急性心不全治療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Treatment of Acute Heart Failure( JCS 2011)
 
 急性心不全による入院後に発症する肺炎のほとんどはいわゆる院内肺炎である.院内肺炎は入院後48時間以降に発症した肺炎と定義される.そ
の診断は症状(発熱,咳,喀痰,胸痛),胸部X線における浸潤影の出現と炎症所見(CRP,白血球数)や細菌学的検査による.急性心不全でも重
症化するほど発症頻度が高く,さらに人工呼吸管理患者,補助循環患者などに高頻度に発症する.感染経路は上気道細菌叢の下気道への吸引,
誤嚥,経気道感染,血行性感染,医療従事者を介する医原性感染などがある.加えて誤嚥や汚染エアゾールの吸入,腸管からの細菌移動なども院
内肺炎の発症要因と考えられる.患者には原因疾患や治療が原因で免疫能の低下した易感染者が多く,心不全の症状や所見が肺炎と類似するた
め診断が遅れることもある.原因微生物には様々な弱毒菌が含まれ,これらの菌には薬剤耐性菌が高率に検出される.以上のような理由から心不
全後発症の院内肺炎は治療に抵抗性で重症化しやすく,予後も不良である.

 予防としては,呼吸管理のためになるべく気管内挿管はせずにBilevel PAPを利用することや早期離床に心掛けることが挙げられる.
4 肺炎
1 経験的治療における抗菌薬選択
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