急性心不全治療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Treatment of Acute Heart Failure( JCS 2011)
 
クラスⅡa
肝保護において画一的な治療はなく,個々の収縮期血圧,
うっ血の状態などに応じて,血行動態が最も安定する方法
を検討する:レベルC
 急性心不全に見られる肝障害は肝うっ血とともに心拍出量低下によってもたらされる.ASTが1,000IU/Lを超えるような重症患者も存在する238).この
ような肝障害が軽快するためには血行動態の改善が必須である239).うっ血肝は右心不全に伴い肝静脈に静脈血がうっ滞することにより生じるが,両
心不全を併発した血管拡張薬抵抗性の難治性慢性心不全で認められる.ビリルビン値が予後予測因子であり,高値患者では点滴強心薬投与が必要
である240).ビリルビン値2.5以上の症例,また肝障害の程度を示すMELDスコア(The Model for End-StageLiver Disease)18以上の症例では,左室
補助人工心臓を装着したとしても血行動態の維持が困難となり,右室補助が必要となる場合が多く,急性心不全症例に対し機械的補助循環療法を検
討する際には肝障害を含めた右心不全の状態を術前より充分に把握して適切なタイミングを測ることが重要となる131),241),242)
3 うっ血肝(表38)
表38 急性心不全におけるうっ血肝の治療
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