急性心不全治療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Treatment of Acute Heart Failure( JCS 2011)
 
クラスⅡa
腎保護において画一的な治療はなく,個々の収縮期血圧,
うっ血の状態などに応じて,血行動態が最も安定する方法
を検討する:レベルB
 急性心不全患者では腎機能低下を合併していることが多く,慢性心不全と同様に腎機能低下は独立した予後不良因子である. 腎機能の臨床的
指標としては従来,BUN,クレアチニンが使用されていたが,最近はeGFRを用いる.急性心不全における治療経過中の腎機能障害の機序は,従来
は腎血流の低下による部分が大きいとされていたが,近年腎血流の低下と腎うっ血の関与が独立して関与していることが知られるようになった231)-
233).したがって,腎保護において画一的な治療はなく,個々の収縮期血圧,うっ血状態などに応じて,血行動態が最も安定する方法を検討する.ま
た,過度の利尿薬の使用は腎機能を悪化させる.腎保護の観点から利尿薬を適切量用い,速やかに腎うっ血を解除する21)

 血管拡張薬の1つであるカルペリチドの腎保護効果は開心術における腎保護,造影剤腎症の予防などにおいて認められる234),235).急性心不全の
実臨床において心不全発症後から投与を開始した場合,画一的に腎保護効果を示すか否かは結論が出ていない236).反応良好患者か否かの鑑別
も今後の課題である.また,腎血流増加を認めるドパミンをはじめとする点滴強心薬についても,実臨床での腎保護作用は確認されておらず,現状で
明らかに腎保護効果が証明された薬剤はない237)

 薬剤にて充分な利尿と血行動態の改善,自覚症状の改善が得られない患者では血液浄化療法を考慮する.
2 腎不全(表37)
表37 急性心不全における腎不全の治療
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