急性心不全治療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Treatment of Acute Heart Failure( JCS 2011)
 
 人の存在を強めるものをここでは支えとして紹介する.支えられ方は,それぞれ個別性が高いものであるが,臨床経験より将来の夢(時間存在),支えとなる関係(関係存在),自己決定できる自由(自律存在)に集約できる291).人はたとえ苦しみを抱えながらも,個々の支えが与えられると穏やかさを取り戻していく292).つまり,臨床の現場において,ただ苦しみを和らげることだけに意識するのではなく,どのような支えがあるのかをキャッチすることが課題となる.

 将来の夢とは,過去の体験から,将来の夢に向けて今を生きようとする力である.たとえ限られた命の中にあっても,やり残したことを残された時間の中で行いたい希望があれば,支えとなる.死んでも,死後の世界観の中で,残された家族との繋がりを意識できるならば,支えとなる.支えとなる関係とは,その人のことを心から認める他者との関係である.治療抵抗性となった心不全にあっても支えてくれる家族・友人・医療スタッフは大きな支えとなる.関係の支えは,必ずしも人間とは限らない.ペットであったり,自然であったり,人を超えた存在も大きな支えとなる.自己決定できる自由とは,ひとりの人間として選ぶことのできる自由であり,基本的人権に関わるテーマである.治療方針を選ぶこと,療養場所を選ぶことなど心不全治療においても,患者の自己決定を大切にすることは,患者の支えを強める援助である.
2 支えをキャッチする
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