急性心不全治療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Treatment of Acute Heart Failure( JCS 2011)
 
クラスⅠ
 ・ 肺水腫を伴う高血圧性心不全におけるニトログリセリン,
Ca拮抗薬(ニカルジピンなど),カルペリチド,ACE阻
害薬,ARBの使用:レベルC
クラスⅢ
 ・ 高血圧性緊急症におけるニフェジピンの舌下投与:レベ
ルC
 肺水腫を伴う高血圧性急性心不全について述べる.肺水腫により呼吸不全を呈している患者では血管拡張薬による血圧管理とNPPVや気管内挿管を含めた呼吸管理が主体となる.

 緊急に降圧を図る患者ではニトログリセリン,Ca拮抗薬などの静注薬を用いる.また,肺うっ血が強ければカルペリチドの併用も効果的である(表34).長期的にはACE阻害薬,ARB,Ca拮抗薬などが用いられる.

 一方,高血圧切迫症は数時間以内に治療を開始すべきである210).比較的作用発現時間の速いループ利尿薬,ACE阻害薬を経口投与する.心機能が比較的保たれている患者ではβ遮断薬も有効である.また,ARBや長時間作用型のCa拮抗薬でも対応できる.

 一般的に,高血圧緊急症の治療の初期目標は平均動脈圧を1~ 2時間程度で前値の約25%まで低下させ,次いで主要臓器の虚血を起こすような過度の血圧低下を避けて2 ~ 6時間程度でおよそ160/100mmHg程度まで下げる.

 これまでこの疾患の治療に即時放出型ニフェジピンの舌下投与が用いられることもあったが,血圧の降下速度や程度を調節できない舌下投与は避けるべきである211)
3 治療
表34 高血圧性緊急症・切迫症の治療薬物
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